オーキーナ

 「四方山話」を始めるとき、百話を目標に書き始めました。すぐにできるだろうと思っていたのですが、なかなか前に進みません。昔書いた話やらネットで見つけた話などを集めて、なんとか五十話まできました。まだまだ先は長く、百話に到るのは何年先になるのか見当もつきません。中間地点の五十話は、息抜きで創作の童話を掲載することにしました。私の子どもがまだ小さいころ、寝床でよく絵本を読んだりしたものです。絵本に飽きてくると創作話もしました。これはそのうちの一つです。
 五條市には金剛山という山があります。国定公園にも指定されている美しい山です。あるとき金剛山を何気なく見ていると、ふと金剛山の姿が横たわる恐竜のように見えたのです。もし世界中の山々が恐竜だったら・・・。子どもに聞かせる創作話もネタが尽きつつありましたので、さっそくお話を考えることにしました。

 むかし、むかし、まだ山も川も海もなかったころ、大きな大きな生き物がたくさん住んでいた。名前はわからない。でも大きいのでオーキーナと言うことにしょう。
 そのころ世界は一年中ぽかぽかとした春で、オーキーナたちは毎日、毎日おいしい草やくだものをたくさんたくさん食べてのんびりとくらしていたんだ。
 ところがある年、とつぜん冬がやってきた。お日さまは姿を見せず、毎日、毎日とても寒い日が続き、オーキーナたちが大好きな草も果物もなくなってしまった。そこで、オーキーナたちは春が来るまで寝ることにしたんだ。
 寒い冬は終わらない。毎日、毎日、何年も何年も雪が降り続いた。雪がオーキーナの背中にどんどんつもり、とうとう空にとどくまで雪が降り続いたんだ。
 でもある日突然、長~い、長~い冬が終わり、春がもどってきたんだ。ぽかぽかお日様に照らされてオーキーナの背中の雪がどんどん溶けて流れ、川になり海になった。でもオーキーナは眠り続ける。春がきたことがわからないのだろうか・・・・。
 背中がかたくなって岩になっても、木が生えて森になっても気がつかない。オーキーナは眠り続ける。そして、とうとうオーキーナたちは山や島になってしまったんだ。
 オーキーナの背中を恐竜たちがノシノシと歩いても、クマや鹿や猿たちが走り回っても、人間たちが木を切って家を建ててもオーキーナは眠り続けた。
 オーキーナはいまどうしているかって?もちろんまだ寝ているよ。耳をすませてごらん。オーキーナの寝息が聞こえてくるかもね。

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