あなたが一番欲しいものはなに?


 あなたが今一番欲しいものはなに?と問いかけられたならばどのようにお答えになるだろうか。以前実施された国民の意識調査によると、この問いかけに対して一番多かった回答が、「健康」そして2番目が「老後の備え」であったそうだ。逆に考えれば今の日本人にとって大きな不安となっているのが、健康と老後といってもよいのだろう。
 確かに、最近の健康に対する関心は非常な高まりを見せている。日本人の平均寿命は、男性が81歳、女性が87歳と世界一だが、残念なことに、いわゆる「寝たきり」となってしまう高齢者の割合も世界一なのだそうだ。長生きするのと、健康で長生きするのとは、(実際はどちらもすごいことなのだが)大きな隔たりがあるように思われる。そこで健康食品やら人間ドック、スポーツジムなどが大流行で、今や私たちの健康に対する関心は、「健康産業」と呼ばれる大きなビジネスを生み出すにいたっている。
 老後も同様に私たちにとって大きな関心事となっている。近い将来、子供の数が極端に少なくなり、老人の割合が増えるという、少子高齢化社会がやってくるといわれているが、そうなると、果たして年金は大丈夫なのだろうか。自分が動けなくなった時に誰が世話をしてくれるのだろうか。様々な高齢者に対する福祉施策が発表されているが、それで本当に十分なのだろうか。そもそも日本の国自体が大丈夫なのか。このままでは国家そのものが破綻しないとは限らないのでは、など老後を考えれば誰もが不安になるもの当然である。そこで、老後の備えとして、せめてお金だけでも蓄えておこうということで、日本は今や世界一の貯蓄国なんだそうである。しかし、健康で老後の備えが十分であれば本当に私たちの将来は大丈夫なのだろうか。以前こんな記事を週刊誌で読んだことがある。
 老後は息子夫婦と、前々から思っていたAさん夫妻は、息子夫婦から「そろそろ一緒に暮らそうよ」、とのさそいもあったことから同居を決意。田舎の自宅を売り払い、その資金を元にして、都心の郊外に一戸建ての家を建て、息子夫婦と移り住んだ。世間から見れば、なんともうらやましい老後ではあるが、うまくいったのは最初の1、2年だそうで、そのあとはごたごた続き。お決まりの嫁姑のいさかいやら、金銭をめぐるトラブルが続出。中でも一番ショックだったのは、かわいいはずの孫に「ぼけじじぃ。はやく死んでしまえ。出ていけ」と言われた時で、結局、こんなことだったら同居するのではなかった。早く死んでしまいたいと思うようになるのである。
 健康で老後の備えが十分であることは確かに私たちの将来にとって大事なことであるのは間違いがない。しかし、いくら健康であろうと、お金がたくさんあろうとも、もし心の豊かさ、平安がなければ、せっかくの健康も、備えも宝の持ち腐れになるのではないだろうか。
 人間はどうも物質的な繁栄をまず第一に考えるが、本当は、心の繁栄が一番なのかもしれない。さて、あなたが今一番に欲しいものはなに?との問いかけだが、一度お互い真剣に考えてみる必要がありそうだ。

 

 

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