十輪寺ブログ

十輪寺梵鐘 ~雨乞いの鐘~

十輪寺梵鐘

十輪寺の正門を入って左側に梵鐘があります。この梵鐘は、延宝7年(1679年)に岡本四郎兵衛直勝により、凉屋壽泉信女の菩提を弔うために奉納されたものです。

梵鐘の向かって左側には、奉納の趣意及び奉納の歳、施主名が刻まれています。

延寶七己末歳
  正月廿九日
  施主當所
  岡松四郎兵衛
  直勝敬白
  和州宇智郡野原村
  西大寺地藏菩薩之
  御寶前鐘樓奉建立
  意趣凉屋壽泉信女
  為頓證菩提也
 

右側は、梵字の光明真言と漢字の廻向文が刻まれています。

十輪寺梵鐘龍頭

梵鐘の龍頭は迫力のある姿をしています。龍が鐘を口でくわえている姿です。

この梵鐘について辯天宗智辯尊女さまは下記のようなお話をされておられます。

 昭和十七年のことです。この年は、くる日もくる日も、ちっとも雨が降ってくれません。炎天つづきで、田んぼはひびわれてしまいますし、作物は枯れてきますし、どうにも仕方のないことになって来ました。
 私のいた十輪寺という寺は、むかしからの伝説で、雨乞いのための釣鐘がございまして、雨乞いで有名だったらしいのです。
 農村では、毎晩、火をたいて、雨を祈っているのだが、いっこうに雨が降らない、この名高い十輪寺の釣鐘をかつぎ出して、雨乞いをしてみたら……と市長さんはじめ、皆さんがおっしゃり、早速、実行に移すことになりました。
 大きな釣鐘ですから、ヒビが入らないように、おろして運ぶだけでもたいへんなさわぎです。みんなでワッショ、ワッショと川上まではこび、川の中へ釣鐘をおきました。水は枯れきっていて、釣鐘の下のほうが、ちょっとだけ水につかっている程度なのです。
 山の中ですので、そこに小屋を建てまして、管長さんが導師となり、お坊さん二、三人で、お祈りをはじめました。
 陽のあるうちは全然食事をとらず、陽が落ちてから、ちょっとぐらいメン類をいただく程度で、ほとんど飲まず食わずのような行を一週間つづけました。
 私が、管長さんを見舞に参りますと、ヒゲはぼうぼうで目は落ちくぼみ、のんきな管長さんですけど、今にも悲鳴をあげそうなようすでした。いえ、悲鳴をあげたのは私のほうで、”もう雨なんか降らんでもええわ……”と思うほどでございました。.
 でも、私もいっしょになり、一生懸命お祈りをつづけますと、やがて、一天にわかにかきくもり……という具合で、今度は、帰り道が案じられるくらい、あたりが真っ暗になってきました。そのうち、きつい稲光がする、大きな雷が鳴ったかと思うと、ザーツと篠つくような雨が降って参りました。
 私のほうにしてみますと、奈良県一円に降ってくれたら……と思いましたが、ちょうどその郡だけ降った雨でございました。それだけ、その雨は、雨乞いによっていただいた雨だという証拠でもあるわけですね。
 これは、どういうことなのでしょうか。
 あの十輪寺の釣鐘には、辯天さまの祈りがこめられてありまして、頭のところに、竜……タツが乗っております。竜が天上するとき、雨が降ってくるのだといわれがございます。
 そのため、当時、戦争中でございましたので、全国の釣鐘は、金属品回収ということで供出されましたけれど、この釣鐘だけは残されたのです。皆さまも、こんど、拝んでいらっしゃったらいいと思います。
 この釣鐘の竜、地鎮祭の日に、私の見た竜……、そして、ことしは、タツの年、辯天さまの年でございます。信者の皆さまにも、きっと幸せのくる年でございます。
(宗祖お言葉集成より)

当時の様子を知る人にお話を聞くと、雨乞いは大成功で、かなりの雨が降ったようです。川の水量が急に上昇したので、川に置いてあった梵鐘が流されそうになり、慌てて引き上げたそうです。

十輪寺梵鐘の音

梵鐘の音をお聞きください。お寺の鐘の音は聞く人の心を静め煩悩を払うと言われています。何かと慌ただしい世の中ですが、梵鐘の音を聞き皆様の心が癒やされますようお祈りいたします。

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